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高松地方裁判所 昭和30年(レ)31号 判決 1962年5月08日

控訴人 鳥取義兵

右訴訟代理人弁護士 阿河準一

被控訴人 高木サキヱ

<外六名>

主文

本件訴訟は、昭和三七年一月二六日訴の取下により終了した。

被控訴人等の当裁判所昭和三七年三月五日受付書面による口頭弁論期日指定申立後の訴訟費用は、被控訴人等の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

本件訴訟記録を調査すると、本件訴訟が当裁判所に控訴審として係属中、控訴代理人(控訴人は第一審で敗訴した原告)が昭和三六年一二月六日訴の取下書を当裁判所に提出し、同日受理されていること、被控訴人等が、右訴取下書副本末尾に、昭和三七年一月二六日付をもつて右訴の取下に同意する旨附記し記名押印のうえ、右副本を当裁判所に提出し、受理されていること並びに被控訴人等は右同意の無効を理由に、昭和三七年三月五日口頭弁論期日指定の申立をしたことは明らかである。

被控訴人等は、右同意は訴の取下の法律上の効果を誤解した錯誤に基づくものであつて、無効である旨主張するので、この点を判断する。およそ訴の取下に対する相手方の同意は、裁判所に対する相手方の一方的な意思表現であり、訴の取下に同意することによつて訴訟終了という訴訟法上の効果のみを生じさせる純然たる訴訟行為と解すべきであるから、私法上の行為に適用される無効、取消の理論はそのまま適用されず、訴訟手続を安定させる必要上、一般に詐欺、強迫あるいは要素の錯誤等外部から容易に知ることのできない行為者の意思の瑕疵を理由としては、その取消無効を主張することができないものと解するのが相当である(もつとも訴の取下またはこれに対する同意が刑事上罰すべき他人の行為に基づくときは、民事訴訟法第四二〇条第一項第五号を類推して、その無効の主張を許す余地が存するであろう。

そこで本件の場合につき観るに、仮に被控訴人等がその主張するように、訴の取下より生ずる訴訟法上の効力を誤解し、訴の取下に同意することによつて、第一審判決が失効することを知らず、その点に錯誤があつたとしても、かかる錯誤は前叙のような理由により右同意の無効を来たすものではなく、右のような錯誤を理由に訴の取下に対する理由の無効を主張することは、その主張自体失当であるといわなければならない。而して他に本件訴の取下に対する同意を無効とすべき事由の存在を認め難いから、本件訴訟は被控訴人等が訴の取下に同意した昭和三七年一月二六日を以て訴の取下により終了したものというべきである。

よつて本件訴訟は訴の取下により終了した旨の終局判決をなすべきものとし、期日指定申立後の訴訟費用につき民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浮田茂男 裁判官 原政俊 伊藤政子)

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